会長挨拶

第13回日本臨床救急医学会の開催にあたって ・・・・・・・・救急の目で地域医療を考える・・・・・・・

第13回日本臨床救急医学会
会長 大橋教良
(帝京平成大学救急救命士コース)

地域医療とは、一言でいえば、地域住民に提供される医療サービスとそれを支えるシステムの全体をさす言葉です。この場合の医療サービスとは、医療機関での個々の治療ばかりか疾病の予防から在宅医療など広い範囲の内容が含まれます。そればかりか「地域住民に提供される医療サービスとそれを支えるシステム全体」が地域医療ならば、実は救急医療も地域医療を構成する重要な要素ということになります。

救急医療にかかわる制度や規則はもちろん国全体で統一されるべきものですが、個々の患者さんに対する救急医療はそれぞれの市、MC、あるいは二次医療圏など、その「地域」の中で最良と考えられる体制で対応することになります。すなわち救急医療はまさに地域医療そのものです。
直接生命にかかわるという点で救急医療は究極の地域医療といっても過言ではありません。

わが国の救急医療体制の歴史を顧みると、当初は、どちらかと言えば事故への対応がその発端となって発展してきた経緯があり、一方、患者を受ける医療機関側の体制はと言えば、時間外診療、休日・夜間救急といった言葉で代表されるような一次的な医療と考えられがちで、医療のシステムとしてとらえてこなかった面が否めません。
救急医療を専門とするわれわれ自身の頭の中にでさえ、もしかしたら「地域医療としての救急医療」という概念が育ってこなかった可能性があります。

今日、様々な側面で医療の崩壊が叫ばれていますが、この危機的状況に対してわれわれ救急医療関係者ができる唯一のことは、「地域医療としての救急医療」という当たり前の原点に立ち返り、救急の専門家としてこれまで培ってきた視点すなわち「救急の目」で、今崩壊の危機に瀕している「地域医療」を考えることである、と、私は確信しております。

第13回日本臨床救急医学会では、医師・看護師・救急救命士(救急隊員)その他多くの救急医療関係者にお集まりいただいて救急の目で地域医療を考え、たとえ微力であっても巷で言われている「医療の崩壊」を少しでも立て直す方向性を示すことができるならば学術集会開催の責任者としてこれに勝る喜びはありません。

来年、千葉市で皆様にお目にかかれることを楽しみにしております。